B型肝炎

<B型肝炎とは?>

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)を原因とし、慢性化すると肝硬変、肝ガンへ移行する危険がある肝臓の病気。
B型肝炎ウイルスは体内に入り込むと、肝細胞の表面にとりついて細胞の核の中にはいる。
ここで増殖を始め、次々と他の肝細胞にとりついては増殖をくり返すことになる。

しかし、このウイルスには肝障害を起こす性質はない。
よって、増殖をくり返していても、それ自体で肝炎が始まることはない。
肝炎の原因は、生体に備わった免疫反応。 本来、免疫反応はウイルスのみに作用しなければならないのだが、B型肝炎ウイルスは細胞の中にとりついているため、免疫反応が細胞にまで及び、肝細胞も同時にダメージを受けてしまっているのである。
この状態が、肝炎である。

このような特徴から、乳幼児期にB型肝炎ウィルスに感染した人のほとんどは、免疫機能が不完全なため、ウイルスが肝臓、血液の中にあっても肝炎が発症しない無症候性のキャリア(持続感染状態)となる。
この無症候性キャリアは、おとなになると肝炎に対する免疫機能により肝炎を起こす。

この時の肝障害が、6ヶ月以上継続するものを慢性肝炎といい、その割合はおよそ10%、残りの90%は再び症状のない無症候性キャリアとなる。
一般的に男性のほうが慢性化しやすい。

一方、おとなになってからの感染では、症状があらわれないで抗体ができてしまうか、急性肝炎を発症して2~3ヶ月で治癒してしまう場合がほとんどで、慢性化することはない。
なお、B型肝炎ウイルスは、劇症肝炎を起こすこともあるので、感染には十分な注意が必要。

<B型肝炎の感染経路>

B型肝炎ウイルスは、人間の肝臓で盛んに増殖し、一部が血液中に出てきます。この汚れた血液が、他の人の血液内に入ることによって感染が成立するのです。 血液を介してといいますと、すぐに輸血が頭に浮かびますが、現在、日本では献血制度が完備され、しかも、輸血前に血液を十分にチェックしていますから、いまでは、輸血でB型肝炎が起こると言うことは、まずありません。

「肝臓病」林茂樹 著 悟桐書院より

かつて、B型肝炎は血清肝炎とか、輸血後肝炎とかいわれたように、血液を介しての感染が多かった。
また、最近、札幌高裁で原告全面勝訴となった<B型肝炎訴訟>の争点、過去の集団予防接種もB型肝炎感染の原因であった。
なお、輸血による感染が完全にゼロというわけではない。危険は残る。

1.垂直感染
出産時、ウイルス保有者である母親からの感染。 現在は、妊婦検診でウイルスチェックを行い、感染の危険がある場合は、ガンマグロブリンとワクチンを使用し、感染を阻止することができる。

2.水平感染
夫婦間など、性交渉による感染。 B型肝炎は、AIDSやヘルペスとならび、新しいタイプの性病(STD)のひとつとされている。
コンドームの使用は感染防止に有効だが、より確実なのは、不特定の相手との性交渉を避けること。 パートナーには、ワクチンの接種で抗体を作ってもらうと良い。 くわしくは


 

 

<B型肝炎のシグナル・症状>

肝臓は沈黙の臓器とも言われるように、肝臓そのものの症状が出てくることはほとんどない。
知らないうちに直ってしまうこともあるが、知らないうちに悪化することもよくある。
このため、肝臓の障害が原因となっているからだのシグナルを見落とさないことが、肝臓病予防には重要である。

*食欲がなくなる、吐き気がする
*全身がだるい、疲れやすい
*イライラ、不機嫌、もの忘れ
*性欲減退、インポテンス *腹が張って、ガスが出やすい
*皮膚や目が黄色くなる(黄疸)
*尿の色が濃くなる、便の色が薄くなる
*皮膚が痒くなる
*手の平が赤くなる
*歯茎からの出血
*こむら返り
*口臭がする

これらは、肝炎以外の肝臓疾患にも広く見られる症状。気になる項目があるときは、速やかに受診したほうがよい。


 

 

<B型肝炎の診断>

上記症状等で受診すると、まず、血液による肝機能検査-健康診断でおなじみの【GPT】【GOT】【γ-GTP】などのチェック。
ほかに尿検査、肝臓のエコー診断、CT、よりくわしい血液検査等が行われる。
以上は肝臓の状態の確認、すなわち、肝炎、肝硬変、脂肪肝などのチェックである。

B型肝炎ウイルスの有無は、血液中のHBs抗原、HBe抗原・抗体反応で調べる。
ウイルスの量を定量的に調べ、ウイルスの活動性を判断する。
また、肝臓の組織の一部を取って、顕微鏡で調べる肝生検が行われることもある。


 

<B型肝炎の治療>

B型肝炎は、その感染の形態によって経過が大きく異なる。
免疫反応が機能するようになったおとなの感染では、感染後自然治癒し抗体を獲得(不顕性感染)するか、急性肝炎を起こして2~3ヶ月の後、治癒するかのいずれかの経過をたどる。
いずれもウイルスを完全に駆逐することができ、以後感染、再発することはない。

一方、乳幼児期に感染した、いわゆるキャリアは、免疫機能が整ってくると、自然に発症、気づかないうちに直ってしまう場合、発症後、治療により治癒する場合、慢性化し、肝炎が継続する場合がある。
治癒した場合でも、ウイルスを完全に駆逐することはできない。
*女性では一生発症しないこともある。

<急性肝炎の場合>
入院しての安静、点滴でビタミンやブドウ糖を補うのが基本的な治療となる。
特に、肝臓への血液の流れを多くするためにも、臥位が有効。ひたすら寝ていることである。
黄疸症状が消えれば、自宅での療養も可能である。 ごくまれに劇症化(死亡率80%)することもあるので注意が必要。

<慢性肝炎の場合>
肝炎が6ヶ月以上継続した状態を慢性肝炎といい、肝硬変、肝ガンへ移行する危険がある。
治療は、肝臓のダメージを抑えることと、ウイルスの駆除。
肝臓の保護には、ミノファーゲンなどのグリチルリチン製剤が使われる。
ウイルス駆除のひとつは、インターフェロン治療。 インターフェロンはウイルスに感染した際、生体を守るために体内で作られる蛋白質の1種。白血球やリンパ球などの免疫に関与している細胞から作られる物質で、ウイルスの増殖を抑える作用がありる。
このウイルスの増殖を抑える物質、インターフェロンを長期(6ヶ月)に渡って投与(注射)すると、30%以上の効果があるとされている。
ただし、インターフェロンには、強い副作用があるので、慎重に投与しなければならない。
また、インターフェロンより成績がよいラミブジンも注目されている。
逆転写酵素阻害剤のラミブジンは、B型肝炎ウイルスのDNA合成を不可能にするものであるため、B型肝炎ウイルスの増殖を抑えるのに高い効果を発揮することができる。
こちらは経口薬のため、患者の負担が軽くて済むが、耐性ウイルスが出現することがあり、かえってウイルス量を引き上げてしまうこともあるので注意しなければならない。
慢性化した肝炎では、ウイルスを完全に駆逐することはできない。
そのため、治療の最終目的は、セロコンバージョン、ウイルスマーカーの中での、e抗原の陰性化 e抗体の陽性化とする。
この状態でのHBV産生は非常に少なく、肝臓へのダメージもなくなるので、セロコンバージョンが達成できれば、一応治癒とみなし、経過観察を続け、再発を防止する。